関節痛=リウマチではない?
関節の痛みがあると、関節リウマチではないかと心配される方も多いと思います。関節や関節周囲にはリウマチ以外にも様々な原因が隠れていることがありますので、まずはご受診いただき、診察を受けていただくことをお勧めします。リウマチの可能性が高ければ早期発見、治療が非常に大切になりますし、もしもリウマチではなければ何より“安心“が得られます。
当院では、十分な問診を行い、丁寧な診察、関節エコー、適切な血液検査を行い、評価を行って行きます。
関節が痛むリウマチ以外の原因として、腱鞘炎など下記に挙げる様々な疾患が考えられます。診断が確定した場合には、適切な治療法を提案し、症状の緩和と生活の質の向上を図ります。必要に応じて、整形外科など連携する医療機関をご紹介いたします。まずは当院までご相談ください。
リウマチでない関節痛が見られる病気
腱鞘炎
腱鞘炎は、腱の周囲の腱鞘が炎症を起こすことで、特定の部位に痛みとこわばりを引き起こします。主に特定の動作や使い過ぎが原因で発生します。痛みは比較的局所的で、通常は活動中や活動後に悪化します。腱鞘炎は一般的に、痛みを起こしたきっけかが特定できる点、特定の部位に限定される点が特徴的です。その一方、関節リウマチは通常、きっけがはっきりせず、複数の関節に広がるのが特徴的です。診察所見でも、2つの違いはある程度特定できます。更年期障害や甲状腺機能異常など、ホルモン異常に起因する腱鞘炎は複数個所に痛みが出ることが多く、関節リウマチと区別が難しいこともあります、関節、腱の超音波検査、血液検査などを組み合わせ、ほぼ原因を同定できます。
神経障害
神経障害は神経そのものの問題で、特定の神経に沿って痛みやしびれが現れます。痛みは神経領域に沿って広がり、神経の圧迫や損傷が原因です。リウマチと異なり、神経障害は関節ではなく神経自体に問題があり、痛みは局所的で特定の神経分布に沿います。
感染症
細菌やウイルスの感染症によって、関節炎が引き起こされることもあります。細菌感染は通常、膝関節や足関節、脊椎関節など、いずれか1か所に炎症を起こす、いわゆる単関節炎を引き起こします。関節炎の程度は強く、強い腫れと熱を伴うのが一般的です。この場合、関節リウマチよりも痛風や偽痛風といった結晶性関節炎が鑑別となります。その一方、ウイルス感染症の多くが、発熱や倦怠感などの全身症状に伴い、体中の複数の関節に痛みをきたします(多関節炎)。一般的に関節は腫れても軽度、熱を伴うようなケースは稀です。複数関節で関節炎を起こすことから関節リウマチとの鑑別は大切ですが、緩徐に進行し、慢性的に経過する関節リウマチに対し、ウイルス性関節炎は急性に全身症状、あるいは咽頭痛など、ウイルス感染症状とともに出現する点で鑑別は難しくありません。パルボウイルス感染症ではときに数週間にわたる関節炎を引き起こし、リウマチと間違われることもあります。
更年期障害
更年期障害は、ホルモン変化、とくにエストロゲンの量や周期の変化によって全身に影響をあたえる症候群であることは有名です。ホットフラッシュや発汗過多、イライラする気分障害が有名ですが、一部の方は関節症も発症します。エストロゲンの減少による関節軟骨の菲薄化などが原因として考えられています。手指や膝など、軟骨が薄くなることで関節のこわばり、むくみ、時に痛みを引き起こします。発症時期がリウマチの好発年齢とも一致するため、症状のみでは関節リウマチとの鑑別は困難なケースもあります。しかし、更年期関節症はあくまで関節“症”で、関節“炎”ではありません。関節の炎症の有無を確認する関節超音波やMRIで区別ができます。また月経周期の確認、他の更年期症状、ホルモン値の測定などである程度診断できます。ご不安があれば、一度膠原病内科を窓口に相談していただくことをお勧めします。更年期障害に関しては婦人科と連携の上、関節の疼痛治療など行っていきます。
手根管症候群
手根管とは、ちょうど手首の位置で神経が束になって通過するトンネルのことを指します。
症手根管症候群は、さまざまな理由で、このトンネル内の水分が増え、内圧が上がることによって、中を通過する神経が圧迫される症候群です。神経の圧迫は手首より先、指や手掌のしびれを生じます。特に親指、人差し指に限局してしびれがみられる場合、この症候群の可能性が高まります。長時間未治療のままだと、親指、人差し指の運動麻痺を生じることもあります。原因は様々で、関節リウマチでも手関節の関節炎でたまった水が手根管に流入し、二次的に手根管症候群を呈することもあります。より一般的な原因として、手首のオーバーユーズ、更年期や甲状腺機能低下症などのホルモン異常が代表的です。
テニス肘
いわゆるテニス肘は正式には上腕骨外側上顆炎と呼ばれる筋肉から腱、腱の付着部にかけての炎症です。外側上顆は肘の外側の骨のやや出っ張った部位で前腕を捻ったり、手首を曲げたり、指を曲げたりする筋肉がまとまって付着している部分です。テニスのラケットを振る動作で痛めることが多く、俗に『テニス肘』と呼ばれています。テニス以外でも同じラケット競技である卓球やバドミントン、ゴルフなどでも生じることがあれば、重いものを持つ動作、長時間のPC作業の後などにも発症します。また、腱がもろくなる時期としては更年期障害でも外側上顆炎が発症しやすい傾向にあります。肘の関節炎との違いは痛みの出る動かし方、痛みが出たきっかけの有無、肘関節周囲の診察で区別できます。
へバーデン結節・ブシャール結節(変形性関節症)
へバーデン結節やブシャール結節は、加齢に伴う軟骨の菲薄化、骨の硬化性変化、関節の変形などが原因で発生する変形性関節症における手指の変形を指します。主に指の末端(第一関節)や中部の関節(第二関節)、親指の付け根などの関節に痛みとこわばり、骨が出っ張ったような変形が現れます。ときに関節リウマチや乾癬性関節炎などのリウマチ性疾患との区別が難しいケースもありますが、変形性関節症では通常強い炎症は生じず、慢性的に少しずつ手指の骨・関節が変形します。丁寧な診察、超音波検査や関節レントゲン検査などで両者を区別することが可能です。変形性関節症は手指だけでなく、膝や股関節、腰の骨などにも生じやすい疾患です。完治をめざせる治療方法がないのも現状で、痛みの緩和や生活習慣の改善など、対症療法がメインになります。