- 変形性膝関節症
- 乾癬性関節炎
- 脊椎関節炎
- 更年期関節症
- 痛風/偽痛風
- 全身性エリテマトーデス
- ウイルス性関節炎
- 抗リン脂質抗体症候群
- 多発筋炎/皮膚筋炎
- 強皮症
- 混合性結合組織病
- ベーチェット病
- 成人発症スチル(スティル)病
- 強直性脊椎炎
- 顕微鏡的多発血管炎
- 多発血管炎性肉芽腫症
- 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
- 急速進行性糸球体腎炎
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、膝の軟骨が加齢や過剰な負荷により摩耗し、痛みや関節の変形を引き起こす病気です。主な症状は、膝の痛みや腫れ、歩行時の違和感、階段の昇降が困難になることで、初期には階段を降りる際に膝の痛みを自覚するようになることが多いです。原因としては、加齢、肥満、過剰な関節への負担などが挙げられます。軟骨再生には女性ホルモンが関与していることもわかっており、女性では、更年期障害の一部として、変形性関節症が生じることもあります。診断はレントゲン(X線)や関節エコー、MRIを用いて軟骨の状態や骨の変形を確認します。年齢とともに非常に多くの方が罹患する疾患ですが、残念ながら完治できる有効な治療はありません。痛み止めの内服や外用薬の使用、関節内注射、サポーター、リハビリなどの理学療法、日常生活が困難な場合は関節置換手術(人工関節)が選択されます。膝に生じる変形性関節症を変形性膝関節症といいますが、この軟骨の菲薄化と骨の変形は全身あらゆる関節に生じ得ます。特に、膝、手指DIP関節、PIP関節(俗にいう第1、第2関節)、拇指CM関節(親指の付け根)腰椎、股関節などが好発部位です。いずれも痛みや腫脹などを自覚します。
乾癬性関節炎
乾癬性関節炎は、皮膚の病気、乾癬に合併することのある関節炎で、皮膚症状に加えて関節痛や腫れを引き起こします。乾癬患者さんで関節炎を合併する頻度は15%程度と考えられており、決して稀ではありません。典型的には手の指、時に指だけではなく手全体が腫れあがり、握ることができなくなります。乾癬皮疹は頭皮など、目立ちにくい場所に好発するため、皮疹に気づかずに関節炎を発症してくることもあります。
原因ははっきり解明されていませんが、遺伝的素因に加え、肥満や喫煙、感染症などの環境因子が関連することが示唆されています。診断は血液検査や画像検査、皮疹部の病理学的検査(生検)を行い、他の関節炎と区別します。治療は、免疫抑制剤や抗炎症薬、または生物学的製剤を使用し、リウマチ膠原病内科で行います。
脊椎関節炎
脊椎関節炎は、脊椎や仙腸関節に炎症を引き起こす自己炎症性疾患で、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患、SAPHO症候群などいくつかの疾患を総称した呼び方です。それぞれの疾患は原因や特徴は少しづつ異なりますが、いずれも複数の関節に炎症を生じたり、脊椎(軸関節といいます)に炎症をきたしたり、関節周囲の腱に炎症が生じたり、ブドウ膜炎(目の炎症)を合併したり、と、共通点が多く、総称して脊椎関節炎と呼ばれています。若年層に発症しやすく、朝起きたときの腰の痛みやこわばりを特徴とし。原因としては遺伝的な要因が強く関与し、HLA-B27という遺伝子の関与が知られています。診断には特徴的な朝のこわばり、関節超音波検査、レントゲン(X線)、MRIなどの画像検査を組み合わせて行います。治療には非ステロイド性抗炎症薬や抗リウマチ薬、生物学的製剤を用います。
更年期関節症
更年期関節症は、女性の更年期にホルモンバランスの変化により関節に痛みやこわばりが生じる状態です。ホルモンバランス異常による、軟骨の菲薄化や浮腫などが原因で生じると考えられています。症状としては、指や肘、手首、膝などに関節の痛みや腫れ、こわばりが現れます。個人差が非常に多い病態で、ほてりや発汗過多など他の更年期症状とともに出現してくるケース、関節の症状のみのケースなど様々です。関節リウマチとの鑑別がときに難しくなります。リウマチの検査を行いつつ、ホルモン値の測定などを合わせて判断していきます。生活習慣の改善、痛みの緩和などが主な治療になりますが、ケースによってはホルモン補充療法で改善することもあります。
痛風/偽痛風
痛風は、尿酸結晶が関節内に沈着することで炎症を引き起こす病気で、主に足の親指に激しい痛みと腫れ、熱感が現れます。偽痛風は、カルシウムの結晶(正確にはピロリン酸カルシウム)が関節に沈着することにより関節炎を引き起こします。どちらも急性に(数日で強い痛みが生じる)関節が腫れ、熱感、痛みを伴うという点ではよく似ていますが、好発する年齢や痛む関節の部位が違います。痛風は中年男性、足の親指の付け根にみられることが多い一方、偽痛風は高齢者の膝関節に好発します。急性に発症する単関節炎(一つの関節のみに限局して起こる関節炎)であることから、感染性関節炎との鑑別が大切になります。また、痛風も偽痛風も複数の関節に同時に出現する(多関節炎)ケースもあり、その場合、関節リウマチなど、その他の膠原病疾患との鑑別も大切です。治療は、急性期の抗炎症薬、コルヒチン内服、炎症が強い場合には一時的にステロイド薬を使用することもありますが、とくに痛風の場合、飲酒を控えること、尿酸含有量の高い食品を控えることなど生活習慣の見直しがもっとも大切です。
全身性エリテマトーデス
全身性エリテマトーデスは、比較的若年女性に好発する自己免疫疾患で、皮膚や関節、全身の臓器に炎症を引き起こします。特徴的な症状の一つに、顔の頬部に出現する蝶形紅斑という皮疹が有名で、多くが多発する関節痛、発熱、疲労感などを伴います。皮膚や関節のみならず、腎臓や胸膜、心膜、神経など、様々な臓器が炎症を生じるのもこの疾患の特徴です。原因は不明ですが、遺伝や環境要因の関与、紫外線暴露による皮膚組織の損傷などが関与していると考えられています。全身性エリテマトーデスの患者さんのほぼ全例で血液検査上、抗核抗体が検出されます。抗核抗体は自分自身の細胞の成分に対する抗体(攻撃因子)で、病態形成に深く関与している因子です。診断は臨床経過に身体所見、血液検査(とくに抗体検査や補体などの免疫検査)、を中心に行います。治療は障害されている臓器や組織に応じて何段階にも分かれています。とくに腎障害が強い場合など、入院の上、高容量のステロイド剤、免疫抑制剤をしっかり併用していくことで寛解を期待できます。
当院では昭和医科大学リウマチ膠原病内科の全身性エリテマトーデス専門外来と連携の上、診療を行っていきます。
全身性エリテマトーデスの初期症状は?
全身性エリテマトーデスの初期症状は、下記のようなものになります。気になる症状がありましたら、まずは膠原病・リウマチ疾患を専門として診療を行っている当院までご相談ください。より精密な検査、慎重な治療が必要な場合には、連携する昭和医科大学リウマチ膠原病内科を中心に専門施設をご紹介いたします。
特に若年~中年女性で
- 繰り返す発熱(微熱から高熱まで)
- 疲労感や倦怠感
- 関節痛やこわばり
- 皮膚症状(特に顔面頬部の蝶形紅斑)
- 筋肉痛や筋力低下
- 日光過敏症(紫外線で蝶形紅斑が出現する)
- 髪の毛が抜けやすくなる(脱毛)
- 繰り返す胸痛(胸膜炎や心膜炎による)
など
抗リン脂質抗体症候群
抗リン脂質抗体症候群は、血液凝固に関連するリン脂質に対する抗体が産生される疾患で、血液が異常に凝固しやすくなることで血管内に血栓が形成されます。足の太い静脈の血栓は陰部静脈血栓症とよばれ、この疾患でもっとも高頻度にみられる病態です。ごく稀ですが、全身の動脈や静脈に多発する血栓がみられ、重篤になることもあります。全身性エリテマトーデスに合併することも多く、若年女性に高率に発症します。
妊娠した際の胎盤形成において、胎盤への血管に血栓がつくくられやすいことも知られており、胎盤機能不全→習慣的な流産という経過で発見されることもあります。
血液をサラサラにする抗凝固療法が治療の主軸になりますが、妊娠出産時には膠原病内科医、産婦人科医との密な連携、妊娠時に安全な薬剤への変更、調整などが必要になります。
当院では昭和医科大学、リウマチ母性内科と連携し、診療可能です。当院を窓口にご相談ください。
ウイルス性関節炎
ウイルス性関節炎の関節症状は様々です。風邪やインフルエンザでも節々の痛くなった経験があると思いますが、多くが一過性のため、数日で消失します。ウイルス感染の中でもヒトパルボウイルス感染症などのように関節炎が数週間持続し、関節リウマチと紛らわしいケースもあります。ヒトパルボウイルスは小児のリンゴ病として流行する感染症のひとつです。周囲でリンゴ病が流行っている時期のお母さん、日ごろから保育園や幼稚園、小学校に勤務されている先生などに好発します。症状は一時的で、通常は数週間で改善しますが、痛み止めや強い炎症の場合、一時的にステロイドを使用することもあります。詳しい経過の問診、関節所見、血液検査におけるウイルス抗体価などを測定し診断していきます。
長引く関節痛、ご不安なことがあればいつでもご相談ください。
多発筋炎/皮膚筋炎
多発筋炎および皮膚筋炎は、筋肉や皮膚に炎症が生じ、筋力低下や皮膚の発疹を特徴とする自己免疫疾患で総称して炎症性筋炎と呼ばれす。特に近位筋(腕なら上腕、足なら大腿部)の筋肉が弱くなり、日常生活が困難になることがあります。原因は不明ですが、免疫系の異常が関与しています。診断は筋肉生検や血液検査で行い、治療にはステロイドや免疫抑制剤を使用します。炎症性筋炎は検出される自己抗体により、皮疹の性状や重症度、進行の速度などが異なります。筋肉と皮膚以外にも、高率に肺病変(間質性肺炎)を合併することも知られています。タイプによっては肺病変が急速に進行し、時に致死的です。早期に診断し、可能なかぎり早く適切な治療(入院治療を基本とします)を開始することが非常に大切です。皮疹はバリエーションが豊富ですが、手指の湿疹、瞼の紅斑や腫れ、首回りに出現する紅斑、膝や肘に出現する角化性(ガサガサする)紅斑などが典型的です。手荒れや何かのアレルギーなどと思い、受診されないケースも多くみます。間質性肺炎も比較的進行が遅い場合、呼吸が苦しいことに自覚しくいことのもあり、受診が遅れることもしばしばあります。
これまでなかったおかしな皮疹、筋力低下(筋肉のだるさのみのこともあります)、軽い息切れなど、気になる症状が診られたら、一度膠原病内科を受診されることをおすすめします。
抗MDA5抗体とは
抗MDA5抗体は、特に皮膚筋炎患者さんにみられ、間質性肺炎と深く関連しています。この抗体が陽性のケースでは、進行性の間質性肺炎を発症するリスクが非常に高く、重篤な呼吸器症状を伴うことが多いです。抗MDA5抗体陽性の皮膚筋炎では、皮膚の潰瘍や関節痛、発熱などがみられることがあり、迅速な診断と治療が重要です。抗MDA5抗体陽性の皮膚筋炎では筋肉の症状がみられないこともあり、初期症状として、手指の関節面みられる紅斑(ゴットロンサイン)、両眼の瞼にみられる赤みと腫れ(ヘリオトロープ疹)、などの典型的な皮疹、軽微であっても労作時の呼吸苦などが合わされば可能性が高まります。気になる症状があれば、すぐに膠原病内科を受診してください。
強皮症
強皮症は、『強い皮』と書きますが、皮膚が徐々に固くなる疾患です。ほとんどのケースで手指の血流障害を伴い、とくに寒さの刺激などで、手指の先が真っ白に変色するレイノー現象が皮膚の硬化に先行してみられます。原因はわかりませんが、比較的若年~更年期前くらいまでに発症するケースが多く、レイノー現象出現後、数年で手や手指のむくみ、皮膚の硬化がみられてくるのが一般的です。一部の方では、レイノー現象と手指の変化が同時に発症します。皮膚硬化が手や指に限局するタイプと全身の皮膚に拡がってしまうタイプに分かれます。検出される自己抗体もタイプによって様々で、抗トポイゾメラーゼ抗体、抗RNAポリメラーゼ抗体、抗セントロメア抗体などが代表的です。皮膚の硬化は皮下組織の線維化(下腿穿刺組織に置き換わる)が原因で生じます。一部の強皮症では、線維化が皮膚のみにとどまらず、食道から腸管の粘膜、肺、血管などに及ぶこともあり、その結果、難治性の逆流性食道炎や頑固な便秘、間質性肺炎や肺高血圧症、腎動脈の狭窄など、さまざまな全身合併症を併発することもあります。治療が難しい病気の一つですが、近年、少しずつ、有効とされる治療の報告が出てきています。初期症状としてのレイノー現象、手指の腫れや硬化などがみられれば、すぐに膠原病内科を受診し、精査をおすすめします。
混合性結合組織病
混合性結合組織病は、全身性エリテマトーデス、強皮症、炎症性筋炎など複数の自己免疫疾患の特徴を併せ持つ自己免疫性疾患の一つです。主な症状は、レイノー現象(寒冷刺激で手指の先が真っ白になる現象)、関節痛や筋力低下、手指の腫れ(指全体がソーセージのように腫れることが多い)などです。ときに髄膜炎や心膜炎、肺高血圧症といった、より重篤な合併症を併発する疾患です。血液検査では抗U-1RNP抗体という特徴的な抗体が検出され、臨床経過と合わせて診断していきます。治療としてはステロイド薬を中心に、3つの病態(全身性エリテマトーデス、強皮症、炎症性筋炎)に即した治療が選択されます。
ベーチェット病
ベーチェット病は、皮膚や粘膜などを中心に全身に炎症を引き起こす自己炎症性疾患で、口腔内や生殖器(外陰部)の潰瘍が特徴的です。炎症部位には白血球の一種である好中球が過剰に集積していることがわかっており、好中球の機能の異常(過剰に集まりやすく炎症を惹起する)が背景にあると考えられています。小さな傷でも、好中球が集まりすぎて炎症を起こし続けるため、なかなか治らず、膿が出てきます。診断の一手法として『針反応試験』といって、皮膚を一部針で傷つけ、数日間、膿が出てくるかどうか確認する試験もあります。
背景に遺伝的要因があることもわかっており、血液型HLA-B51が陽性になる方が多いのもこの病気の特徴です。必然的に、日ごろ傷つきやすい粘膜(口腔粘膜や外陰部粘膜)がターゲットになりやすく、難治性で繰り返す口内炎、陰部潰瘍を主訴に受診されるケースがほとんどです。若年で発症する疾患で、小児期の発症も多くみられます。皮膚では他に、毛嚢炎様皮疹(ニキビのような膿のでる皮疹)、血栓性静脈炎、結節性紅斑などがみられます。また、眼のブドウ膜炎を合併することも多く、未治療で進行すると失明へとつながることがあるため、早期発見、早期治療が大切です。、ブドウ膜炎の症状は眼のかすみ(視界が濁る感じ)、眼の充血や痛みが代表的です。全身の炎症性疾患のため、皮膚や粘膜、眼以外にも、時に消化管全体、神経、血管などに繰り返す炎症が生じ、腹痛や下痢、血便などの症状、けいれんや頭痛、認知機能低下などの精神神経症状、血管内の血栓などがみられる場合もあり、これらを特殊型ベーチェット病とよびます。
治療はタイプによって様々ですが、皮膚粘膜のみの場合、コルヒチンといって好中球の動きを少し鈍らせるような薬剤が第一選択になります。眼や全身臓器に炎症を繰り返す場合、ステロイド薬、生物学的製剤(TNF-α阻害剤)、免疫抑制薬などを組み合わせて使用します。
成人発症スチル(スティル)病
成人発症スチル病は、発熱、関節痛、全身の皮疹を伴う急性の全身性炎症性疾患です。
典型的には39℃を超えるような高熱が朝と晩にわけて出現する弛張熱というパターンを取ります。熱が高くなると同時に全身に紅斑(体の一部のこともあります)が出現し、解熱するとともに消えていくという皮疹の特徴があり、ピンク色の皮疹にはサーモンピンク疹という呼称がついています。発熱、皮疹に加え、のどの痛み、関節の痛み(膝や足首、手首や肘など)が加わるのが一般的です。一般的な風邪との大きな違いは、発熱が一日に何度も波をもって出現してくる点、3-4日では解熱しない点、皮疹を伴う発熱である点などです。通常の風邪では喉の痛みは一度出現すると2-3日は持続するのに対し、成人発症スチル病ののどの痛みもまた、皮疹と同様、一日の中で強弱があり、解熱している時間は痛みを感じなくなるケースも非常に多いです。一部の方では心膜炎や胸膜炎など、皮膚や関節を超えた臓器に炎症が波及します。心膜炎や胸膜炎では胸や背中の痛み、とくに大きく息を吸う際の痛み(胸膜性胸痛)を自覚します。好発年齢は平均で20歳前後(16歳~35歳くらいの層に多い)原因はわかっていませんが、何らかのウイルスや細菌の感染をきっかけに、免疫細胞が過剰に活性化し、不必要に大量の免疫物質(サイトカインなど)が体の中を駆け巡る結果生じる病態と考えられています。非常に強い免疫反応のため、急性期にはほとんどのケースでステロイド薬を必要とします。治癒しうる疾患ですが、多くの方が数年単位の継続治療を有します。薬の減量とともに半数近くの方が再発をするといわれており、長期的にはステロイド以外のより副作用の少ない薬剤(生物学的製剤や免疫抑制剤)が選択され治療を続けていきます。
強直性脊椎炎(脊椎関節炎に分類される疾患)
強直性脊椎炎は、脊椎や仙腸関節(脊椎と骨盤をつなぐ関節)に慢性炎症を引き起こし、放置すると個々の背骨が上下の背骨と固くつながって背中全体が徐々に硬直することがあるためこの名前で呼ばれています。特に若年者に発症しやすく、腰痛や朝のこわばりが特徴です。通常、腰や背中を痛めた場合、安静を保てば痛みはやわらぎ、オーバーワークで痛みが出現するような痛みのパターンをとりますが、強直性脊椎炎(もっといえば脊椎関節炎すべて)では安静にすればするほど、背骨の関節のこわばりが強くなります。炎症によって普段より多く産生されてしまう関節液が、安静時に大量につくられ関節や腱周囲にたまるため、朝の寝起きに痛みやこわばりがもっとも強くなります。この現象は俗に『炎症性腰痛』とよばれ、この疾患を考える大事な病歴になります。
この疾患もまた、原因の詳細はわかっていない部分が大きいのですが、遺伝的要因、とくに血液型HLA-B27遺伝子の関与が知られています。遺伝的背景の方に、感染症(溶連菌など)などのきっかけが重なり発症する可能性が考えられています。○○抗体など診断に有効な検査異常はみられない病気で、診断は特徴的な病歴、関節超音波やレントゲン(X線)、MRIなどで総合的に行います。進行を抑えるための治療として、生物学的製剤を使用します。
顕微鏡的多発血管炎
顕微鏡的多発血管炎は、名前のとおり、血管そのもの、血管を形作る壁=血管壁に炎症を引き起こす疾患です。全身の小さな血管がターゲットになりますが、とくに血管が密に存在する腎臓や肺、上気道(鼻や耳)、末梢神経、皮膚などに好発します。血管壁に炎症は血液の流れを阻害し、臓器や組織の障害をもたらします。主な症状は、発熱、倦怠感に加え、咳や息切れ、新規に出現する足のしびれ、麻痺、皮疹(小さな痣や紅斑)などです。軽微ですが、鼻詰まりや嗅覚障害、難聴などを自覚することも多い疾患です。原因は免疫異常の素因に加え、なんらかの環境因子(粉塵吸入や薬剤など)が発症に関与すると考えられていますが、全容はまだわかっていません。血液検査ではMPO-ANCAと呼ばれる自己抗体が検出され、少がされている臓器や組織の評価を行い診断します。障害臓器の精査、診断後の治療の流れは入院して行うのが一般的です。
多発血管炎性肉芽腫症
多発血管炎性肉芽腫症は、名前のとおり、血管そのもの、血管を形作る壁=血管壁に炎症を引き起こし、肉芽という炎症組織が形成される疾患です。全身の小さな血管がターゲットになりますが、とくに血管が密に存在し免疫応答が生じやすい臓器や組織に好発します。上気道(鼻や耳)や眼、肺、などに好発します。一部のケースは腎臓や硬膜(脳を包む膜)、神経などにも障害がみられることもあります。主な症状は、発熱、倦怠感に加え、鼻の詰まりや鼻出血、難聴や耳鳴り、咳や血痰などを伴います。診断は臨床症状に加え、自己抗体(PR3-ANCAやMPO-ANCAと呼ばれる抗体)、障害臓器や組織の組織診断(生検)で特徴的な肉芽腫性炎症を証明することによります。治療は高容量のステロイド薬、免疫抑制剤を組み合わせて比較的強い治療が必要になります。
障害臓器の精査、診断後の治療の流れは入院して行うのが一般的です。
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は、名前のとおり、血管(血管壁)に炎症を引き起こし、肉芽という炎症組織が形成される疾患です。その炎症の機序に好酸球というアレルギー反応の際に増加する白血球が関与している疾患です。この病気を発症する前に、アレルギー疾患でもある気管支喘息を発症しているケースが大半で、多くが喘息の増悪とともに、二次的に血管炎が発症します。全身の小さな血管がターゲットになり、上気道(鼻や耳)や、肺、などに好発します。末梢神経に障害がみられることも多く、急性に始まる両足のしびれ、運動麻痺がみられることもしばしばあります。神経障害は進行が速く、日に日にしびれや麻痺が強くなる傾向にあります。一度神経障害を来すと、完全回復は難しく、治療後もしびれや麻痺の症状が残ることが多いので、この疾患も早期診断と早期治療が非常に大切になります。
主な症状は、喘息の増悪後に引き続く、手足(ほとんどが足の先から)のしびれ、動かしずらさ(麻痺)、鼻の詰まりや難聴・耳鳴り、咳咳などです。皮膚に小さな紅斑や紫斑(痣)がみられるケースもあります。診断は臨床症状に加え、自己抗体(MPO-ANCAと呼ばれる抗体)、障害臓器や組織の組織診断(生検)で特徴的な好酸球が集まる所見、肉芽腫性炎症を証明することによります。治療は高容量のステロイド薬、免疫抑制剤、神経症状が強い場合、ガンマグロブリン製剤の点滴などを組み合わせ、比較的強い治療が必要になります。障害臓器の精査、診断後の治療の流れは入院して行うのが一般的です。
急速進行性糸球体腎炎
急速進行性糸球体腎炎は、腎臓の尿を産生するろ過装置:糸球体に急速な炎症が起こり、腎臓の機能が短期間でどんどん増悪する病態を指します。全身性エリテマトーデスや血管炎など、様々な膠原病でみられる腎臓の病型の一つです。顕微鏡的血尿や蛋白尿といった尿検査異常、血液検査における腎機能の異常(血清クレアチニン:Cr上昇)などが診断の手掛かりになりますが、肉眼的に血尿がみられることはほとんどなく、自覚症状自体はほぼありません。全身性エリテマトーデスや血管炎など、腎臓以外の症状に隠れて存在していることがあるため、このような疾患を疑った際には、適切なタイミングで尿検査や血液検査を行い評価することが大切です。治療が遅れると、腎機能の回復も見込めず、ケースによっては透析が必要になることもあります。
正確な診断は腎生検により病理学的所見に元図いて行われます。治療は原疾患により多少異なりますが、膠原病が背景にある場合は、免疫抑制剤や高容量のステロイド薬が中心ですが、難治例には血液のタンパク成分を入れ替える血漿交換などが必要になるケースもあります。