関節リウマチとは
関節リウマチは、自分の免疫システムが誤って自分の関節を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つです。進行性の病気であり、適切な治療を行わないと関節の破壊や変形、痛み、機能障害が進行します。
関節リウマチの特徴
- 主に関節に炎症が起こる(特に手足の小さな関節)
- 左右対称に起こることが多い
- 慢性的な疾患で、進行性
関節リウマチの原因
正確な原因はまだ完全には分かっていませんが、以下が関与していると考えられています。
- 遺伝的要因(家族歴など):家族に関節リウマチの方がいる場合、発症する確率が数倍高まると考えられています。
- 免疫異常
- 女性ホルモン:詳しいことはわかっていませんが、関節リウマチは圧倒的に女性に多く、妊娠や出産、更年期などホルモンバランスとともに病勢が変化するのも特徴です。
- ウイルスや細菌感染などの環境要因
- 喫煙・歯周病などの生活習慣:喫煙と歯周病はともに関節リウマチを発症させたり、増悪させたりする要因としてあげられます。筋炎や定期的な歯科受診が必要になります。
関節リウマチの症状(初期症状)
- 朝のこわばり(朝起きたときに関節が硬く動かしにくい)
- 関節の腫れ・痛み・熱感:多くが手首や指など小さな関節に症状が出ます。比較的高齢で発症する場合、肩や膝、股関節など大きな関節の炎症が全面的に目立つことも多く経験します。
- 全身の倦怠感・疲れやすさ
- 進行すると関節の変形や機能障害
- 関節以外にも、肺、心臓、目など全身に影響が及ぶこともあります。特に間質性肺炎や気管支拡張症など、肺に影響が出ることが多いです。
関節リウマチの診断
以下を総合して診断されます。
- 症状と病歴
- 血液検査(リウマトイド因子、抗CCP抗体、CRPなど)
- 画像検査(関節X線、関節MRI、関節超音波)特に簡便に炎症を描出できる関節超音波(エコー検査)は診断や治療効果判定において有効性が高い
関節リウマチの治療
治療の目的は、炎症を抑え、関節破壊を防ぎ、生活の質を保つことです。
従来型抗リウマチ薬(DMARDs)
メトトレキサートなどリウマチ治療の軸となる内服薬。間質性肺炎の合併や腎障害がある方など、一部使用できない方もいますが、リウマチと診断されたら、基本的にまず初めに飲むお薬です。
生物学的製剤
TNF阻害薬、IL-6阻害薬など、免疫を調整する薬です。週1回~月1回程度の皮下注射(自己注射)で使用します。自己注射キットは安全性も高く、どなたでも簡単にできるものになっています。自信をもって使用できるようになるまで、当院で丁寧に指導させていだいます。
分子標的抗リウマチ薬
JAK阻害薬と呼ばれる内服薬。生物学製剤、それ以上の効果をもつお薬です。メトトレキサートや生物学的製剤で効果が不十分な場合にも効果が期待できるお薬です。
ステロイド薬・NSAIDs
炎症や痛みのコントロールを目的に補助的に使用しますが、これ自体がリウマチの根本的な治療薬にはなりません。
リハビリ・運動療法
関節炎が強い際は過度な負荷は症状の増悪の原因になります。炎症が強い際は安静を保つようにしましょう。治療により炎症が沈静化した後も、関節のこわばりや可動域制限、筋力低下が残る場合があります。その際には関節の負担を考慮した適切な運動やストレッチなどが必要になることもよくあります。動かした方がよいのか、どう動かせばよいのか、なかなか自分では判断できない部分かと思います。推奨される運動も個人差がとも大きいので、リウマチ担当医と相談しながら実践していくことをお勧めします。当院ではご自宅でも簡単にできる運動やストレッチを提案します。
重度の場合は手術(人工関節置換術、滑膜切除術など)
関節リウマチの内科治療の進歩で、近年は手術を要するほどの変形は稀になってきています。それでも一部治療抵抗性の方などでは手首、手指、足の指の変形が進み、日常生活に影響することがあります。そのような場合には、人工関節置換術など関節形成の手術が選択される場合もあります。しかし、手術による合併症(感染症や血栓症など)のリスクも考えると慎重に選択しなければならないことも事実です。手術の可否に関しては、ご年齢や免疫状態、内服薬の種類、リウマチ以外の合併疾患の有無と種類など、それぞれのケースごとに整形外科医と連携して慎重に進めていきます。
関節リウマチのよくある質問
関節リウマチになるきっかけは何ですか?
関節リウマチの原因は完全に解明されていませんが、免疫の異常によるものと考えられています。また、細菌やウイルスへの感染、過労などによるストレス、出産、喫煙、歯周病などもリスク要因になるとされています。また、遺伝的要因なども考えられており、こうした要因が重なることが発症のきっかけとして考えられます。
関節リウマチは遺伝する?
関節リウマチと診断されると、皆さん、やはり自分のお子さんのことを心配され、「リウマチは遺伝するのか?」という質問を受けることがあります。関節リウマチの発症には、遺伝的要因と後天的な影響(環境要因)のいずれも関与すると考えられています。親がリウマチを患っていたとしても、必ずしも子どもに高頻度に遺伝するわけではありません。関節リウマチを罹患した親や兄弟姉妹がいる方で、関節リウマチを発症する確率は一般的なリウマチの発症率の3倍~5倍程度とされています。一般的なリウマチの発症確率が200人に1人、であることを考えると、リウマチのお母さんが200人に子供を産んで最大で5人程度がリウマチを発症する割合になります。195人はリウマチと無縁の人生を送ります。過度に心配する必要のない程度の確率、言い換えれば、妊娠や出産をあきらめるような確率では決してないということが大切です。
関節リウマチは完治しますか?
関節リウマチは、完治の難しい病気です。しかし、医療技術の進展により病気の進行を抑えることは可能です。こうした状態を寛解と呼びます。関節リウマチは早めに発見し、治療することにより、なるべく早めに寛解状態を達成することを目指していきます。
手のこわばりが続いています。リウマチの可能性はありますか?
朝起きたときや、長時間の休憩後に手がこわばる症状が続く場合、関節リウマチの初期症状である可能性があります。ただし、変形性関節症などよくある病気でも手指のこわばりが起こることがありますので、まずは専門医による診察を受けるようにしましょう。
血液検査でリウマチ因子が陽性でした。これはリウマチですか?
リウマチ因子が陽性でも、必ずしも関節リウマチとは限りません。リウマチ因子は他の疾患でも、健常者でも陽性になることがあります。関節リウマチの診断には、血液検査よりも症状や関節所見(診察)、関節超音波検査など他の診断方法がより重要となります。
関節が痛いので病院に行きましたが、血液検査で異常がないと言われました。それでも関節リウマチの可能性はありますか?
血液検査でリウマチ因子が陰性でも、関節リウマチの可能性は否定できません。リウマチ因子や抗CCP抗体など関節リウマチの特徴的とされる免疫異常がないケースも多くみられます。このようなケースは『血清反応陰性関節リウマチ』と診断し、同様の治療が必要になります。複数の小さな関節に炎症があれば、検査結果に関わらず関節リウマチの可能性は高まります。症状が続く場合は、リウマチ専門医にご相談ください。
関節リウマチと診断されましたが、日常生活で注意することは何ですか?
痛みがあるときは関節に負担をかけないよう、心がけましょう。痛みがない期間(状態が良いとき)は関節に負担をかけない筋力トレーニング、関節ストレッチなど、とても大切です。当院でもしつこく指導していきます。
また、歯周病菌は関節リウマチを増悪させる因子です。定期的な歯科クリーニング、歯周病予防を心がけましょう。
関節リウマチがあっても、妊娠は可能ですか?
妊娠は可能です。一般的に寛解状態が数か月維持できていて、妊娠に悪影響を及ぼす治療薬がやめられている状態であることが条件です。妊娠を希望される場合は、事前に主治医と相談し、適切な治療計画を立てましょう。当院では、昭和医科大学病院リウマチ母性外来と連携し、リウマチ患者さんの妊娠計画、妊娠出産、産後までサポートします。
関節リウマチの治療薬には副作用がありますか?
はい、関節リウマチの治療薬には副作用がある場合があります。薬の種類によって大きく異なりますが、薬剤アレルギーや肝障害、腎障害などに加え、免疫抑制剤などは感染症のリスクを高めることもあります。また、ごくまれですが、一部の免疫抑制剤は、免疫系のさらなるエラーを引き起こす場合や免疫細胞の腫瘍(リンパ腫など)を引き起こすことも報告されています。定期的な診察、血液検査を受け、副作用の兆候があればすぐに専門医に相談してください。
■代表的な副作用
薬 | よくある副作用 | 稀だけど気を付ける副作用 |
---|---|---|
メトトレキサート | 口内炎、倦怠感、肝障害 | 肺炎、リンパ腫、感染症 |
タクロリムス | 腎障害、糖尿病 | |
TNFα阻害剤 | 注射部位反応(皮膚炎) 免疫系の過剰反応 感染症 |
|
IL-6阻害薬 | 白血球低下(軽度) | 感染症 注射部位反応 腸管憩室炎 |
JAK阻害薬 | 帯状疱疹 感染症 |
|
NSIADs | 腎障害、アレルギー、胃潰瘍 | |
ステロイド (長期内服) |
骨粗鬆症、感染症、糖尿病、高血圧、脂質異常症、むくみ、不眠症、筋力低下、皮膚の菲薄化、白内障、副腎不全、多毛、にきび |
飛行機に乗っても大丈夫ですか?
基本的に、飛行機に乗ることは関節リウマチにおいて問題ありません。気圧の変化で一時的に関節のこわばりを自覚することも稀にありますが、関節炎を増悪するものとは考えられていません。長時間フライト前に治療薬の管理や持ち運びに関して、事前に医師に確認すると安心です。
まとめ
関節リウマチは早期発見と早期治療がとても大切です。放置すると数か月で関節の破壊が進み、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。朝の手のこわばりや関節の腫れが続く場合は、早めにリウマチ専門医を受診しましょう。