レイノー現象とは
レイノー現象とは、寒さやストレスにより手や足の指先が白く変色する現象です。血管の過度な収縮が原因で起こる一過性の虚血症状です。痛みやしびれを伴うこともあります。一次性のレイノー現象は、特定の病気に関連しないことが多く、二次性のレイノー現象は膠原病(例:全身性硬化症、全身性エリテマトーデス)などの基礎疾患が原因です。症状管理には、寒冷刺激を避けることが重要です。
レイノー現象の症状
下記のような症状が見られましたらレイノー現象かもしれません。膠原病内科・リウマチ科を専門とする当院までご相談ください。
- 寒いところにいると指先が急に白くなる
- 指先が白から徐々に青紫色に変化して冷たくなる
- 指先がピリピリして感覚がなくなったように感じる
- 指先が白、青紫色に変化した後赤くなり、ジンジンするような痛みがある
- ストレスがかかったときに指先が変色する
- いつも冬や冷えたところで症状が出て不安になる
など
レイノー現象の原因
レイノー現象の原因は、大きく2つに分類されます。
一次性(原発性)レイノー現象
特定の病気に関連せず、主に寒冷刺激やストレスによって引き起こされます。若い女性に多くみられ、一般的には軽度で日常生活に大きな支障をきたすことは少ないです。
二次性(続発性)レイノー現象
膠原病などの基礎疾患が原因です。血管の損傷や結合組織の異常が関与し、症状が重くなることがあります。また、薬剤の副作用や仕事での振動工具の使用、喫煙なども原因となることがあります。
全身性硬化症
全身性硬化症は、皮膚や内臓の結合組織が硬化する自己免疫疾患です。免疫系が異常を起こし、自己の組織を攻撃することで炎症が生じ、皮膚や内臓が硬くなります。レイノー現象は、最も一般的な初期症状の一つであり、寒さやストレスによって末梢血管が強く収縮することで発生します。硬化により血管の柔軟性が低下し、血流障害が進行することがあります。全身性硬化症では、手指の潰瘍や壊死に至ることもあり、早期診断と治療が重要です。
全身性エリテマトーデス
全身性エリテマトーデスは、全身の臓器や組織に炎症を引き起こす自己免疫疾患です。体内の免疫系が正常な細胞や組織を攻撃するため、多様な症状が現れます。レイノー現象は、約3割の患者様にみられる症状で、血管が異常に収縮し、手足の指先が変色します。特に寒冷刺激やストレスが引き金となります。全身性エリテマトーデスは関節炎や皮膚症状、腎障害など、全身に影響を与えるため、レイノー現象とともに他の症状の管理が必要です。
混合性結合組織病
混合性結合組織病は、全身性硬化症、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎などの特徴を併せ持つ自己免疫疾患です。この病気では、レイノー現象が非常に高頻度でみられ、早期の兆候となることがあります。免疫系の異常により、血管が収縮しやすく、血流が悪くなるため、指先が変色し、冷たく感じられます。また、関節痛や筋力低下、肺や心臓の障害が現れることもあります。混合性結合組織病は、初期症状が他の膠原病と類似しているため、診断が難しいことがあります。
強皮症
限局性硬化症、または強皮症は、皮膚が硬化する病気で、全身性硬化症に比べて内臓への影響は少ないですが、局所的な皮膚の硬化がみられます。レイノー現象は、限局性強皮症でもよく見られ、血流の異常が原因で指先が白く、青紫色、赤色に変わります。
多発性筋炎・皮膚筋炎
多発性筋炎と皮膚筋炎は、主に筋肉に炎症を引き起こす自己免疫疾患です。皮膚筋炎では、皮膚にも特徴的な発疹が現れることが特徴です。筋力の低下や痛みが主な症状ですが、レイノー現象も併発することがあります。血管に炎症が生じることで末梢の血流が悪くなり、手足の指先に変色や痛みが生じます。皮膚筋炎では皮膚の炎症が加わるため、症状がより顕著に現れることがあります。
シェーグレン症候群
シェーグレン症候群は、主に目や口の乾燥を引き起こす自己免疫疾患です。涙や唾液を分泌する腺が免疫系によって攻撃されることで、乾燥症状が発生しますが、全身の血管や臓器にも影響を与えることがあります。レイノー現象は、シェーグレン症候群の患者様でもよく見られ、寒冷やストレスによる血管の異常収縮が原因です。その他の症状としては、関節痛や疲労、倦怠感なども見られることがあります。
レイノー現象の治療
生活習慣の改善と予防
レイノー現象を防ぐために、以下の対策が推奨されます。
寒さや寒暖差を避ける
寒冷刺激、寒暖差が症状の引き金になるため、冬場は手袋や靴下を着用し、体を冷やさないようする。急な寒暖差を避けるようににします。
ストレス管理
精神的ストレスも交感神経刺激により血管の収縮を引き起こすため、リラックス法やストレス管理が重要です。
禁煙
喫煙は血管を収縮させ、症状を悪化させるため禁煙が推奨されます。
手足の保温
寒冷環境にいる際は、ホットパックや暖房を使って手足を温めることが有効です。
薬物療法
症状が重い場合や、生活習慣の改善だけでは効果がない場合に薬物治療を検討します。
カルシウム拮抗薬(ニフェジピン、アムロジピンなど)
これらの薬は血管を広げ、血流を改善するために使用されます。特に二次性レイノー現象で症状が強い場合によく使います。
硝酸薬(ニトログリセリン軟膏)
血管拡張効果があり、指や足の末端部分に塗布して血流を改善することができます。
プロスタグランジン製剤
血管を拡張し、血流を改善する効果がある薬です。重症のレイノー現象や、潰瘍や壊死を防ぐために点滴や注射で使用されることがあります。
α-ブロッカー
血管の収縮を抑えるための薬で、レイノー現象の発作を軽減します。
抗血小板薬(アスピリンなど)
血小板の凝集を抑制し、血栓の形成を防ぐために使用されることがあります。特に二次性レイノー現象で血栓がリスクとなる場合に考慮されます。
外科的治療
重症のレイノー現象で、薬物療法が効果を示さない場合に考慮します。
交感神経切除術
交感神経が過剰に活動して血管を収縮させるため、交感神経を一部切断して血管の過剰な収縮を防ぐ手術です。ただし、この手術は一般的ではなく、症状が重く、他の治療法が効果を示さない場合に限られます。
基礎疾患の治療
二次性レイノー現象の場合、膠原病や自己免疫疾患などの基礎疾患を治療することが重要です。基礎疾患のコントロールが改善されると、レイノー現象の症状も軽減することがあります。例えば、全身性硬化症や全身性エリテマトーデスの治療に用いられる免疫抑制薬が、レイノー現象の症状を和らげることがあります。