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シェーグレン症候群

シェーグレン症候群とは

シェーグレン症候群とはシェーグレン症候群は1933年にスウェーデンの眼科医、ヘンリック・シェーグレンによって発見された病気で、その名前が付けられました。日本では1977年に厚生労働省の研究班が調査を行い、知られるようになりました。若年~中年の女性に多く見られ、涙腺や唾液腺の慢性炎症の結果、唾液や涙の出がわるくなり、眼の乾燥(ドライアイ)、口の乾燥(ドライマスス)を来す自己免疫疾患です。シェーグレン症候群は膠原病(関節リウマチ(RA)全身性エリテマトーデスなど)に伴う場合と、これらの病気がない場合に分かれます。また、視神経脊髄炎と呼ばれる神経系の病気と一緒に発症することもあります。


シェーグレン症候群のタイプ

乾燥症状のみのタイプ

目の乾燥(ドライアイ)口の乾燥(ドライマウス)があるものの、他に大きな問題がないケースでシェーグレン症候群の大部分がこのタイプです。唾液腺が腫れて痛みを伴う炎症を繰り返すタイプと、痛みや腫れはほとんど見られず、慢性的に機能が低下していくタイプとに分かれます。比較的若い年齢でシェーグレン症候群を発症した場合、腫れや痛み(時に発熱)を伴う唾液腺炎を繰り返すケースが多いです。機能障害が進むと、乾燥症状がひどく日常生活に大きな影響が出ることもあります。

全身に影響があるタイプ

シェーグレン症候群の腺外(唾液腺や涙腺以外の)症状として、間質性肺炎や腎障害、まれに神経障害などを伴うことがあります。全身の疲れやすさや、微熱を伴うこともあります。


シェーグレン症候群の初期症状
(セルフチェック)

シェーグレン症候群の症状として、下記のような症状が見られます。

など


シェーグレン症候群の原因

シェーグレン症候群の原因シェーグレン症候群の発症原因はまだ完全には解明されていませんが、以下の4つの要因が関与していると考えられています。まず、遺伝的要因として、体質が親から子へある程度受け継がれることが報告されています。また、環境要因として、ウイルス感染やストレスなどが引き金となることも示唆されています。なんらかの免疫刺激によって、免疫システムが誤作動をおこし、自分自身の組織を攻撃してしまうことが原因とされています。女性ホルモンの影響も大きく、特に女性に多く見られることから関連性も指摘されています。これらの要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。


シェーグレン症候群の
検査・診断

シェーグレン症候群(Sjögren症候群)は自己免疫疾患の一つで、主に涙腺や唾液腺が障害され、口や目の乾燥が主な症状です。診断のためには複数の検査が必要で、臨床症状・血液検査・画像診断・組織検査などを組み合わせて行います。以下に主な検査項目をまとめます。

分類基準(日本リウマチ学会の分類基準の一部)

以下のうちいくつかの項目を満たすことで診断されます。

  • 目の乾燥の自覚
  • 口の乾燥の自覚
  • シルマー試験陽性
  • 唾液腺機能低下
  • 抗SSA/SSB抗体陽性
  • 唇の小唾液腺生検陽性

シェーグレン症候群の検査には以下のようなものが提案されており、組み併せて評価し、院断していきます。

血液検査

検査項目 意義
抗SSA(Ro)抗体 / 抗SSB(La)抗体 シェーグレン症候群に特異的。陽性率はSSAで50~70%程度。
抗核抗体(ANA) 多くの自己免疫疾患で陽性になる。
リウマトイド因子(RF) 約半数で陽性になる。
IgG高値 免疫活性の上昇を示す。

涙腺機能検査(ドライアイの評価)※この検査は眼科で行います

検査名 内容
シルマー試験(Schirmer test) 涙の分泌量を測定(通常5mm未満/5分は異常)
フルオレセイン染色 角結膜の障害を評価
涙液破壊時間(BUT) 涙の安定性を評価。10秒未満は異常とされる。

唾液腺機能検査(ドライマウスの評価)

検査名 内容
唾液分泌量測定(サクソンテスト、ガムテスト) ガーゼやガムを数分間噛んでもらい、唾液分泌量を測定します
唾液腺シンチグラフィー 放射性物質で唾液腺の機能を評価
MRIやCT、エコー 唾液腺の構造的変化を確認(例:嚢胞、萎縮など)

生検(確定診断に行うこともある)

検査名 内容
下唇小唾液腺生検 唇の皮膚に存在する小唾液腺にリンパ球の浸潤が見られる(病理学的所見)スコア(焦点スコア)で評価され、1以上で陽性。簡単な手術になります。必要に応じて行うこともありますが、侵襲が大きいため、その他で診断がほぼ確実なケースでは行いません

その他の検査

  • 尿検査・腎機能検査:腎障害(間質性腎炎など)の評価
  • 肺機能検査・胸部レントゲン検査:間質性肺炎などの合併症の評価
  • 神経学的評価:末梢神経障害などを伴う場合に行う

シェーグレン症候群の治療

残念ながら、シェーグレン症候群は、根本的な治癒が難しい疾患です。主に「症状の緩和」と「合併症の予防・対処」が中心になります。治療方針は、症状の重症度・臓器の関与・患者さんの生活への影響などに応じて個別に決定していきます。
以下に主な治療法をまとめます。

乾燥症状
(ドライアイ・ドライマウス)
の治療

ドライアイの治療

方法 内容
人工涙液(点眼) 最も基本的な治療。無防腐剤タイプが推奨されます。
ヒアルロン酸点眼薬 粘稠性が高く、保湿効果あり。
ステロイド点眼 炎症が強い場合にのみ短期間使用することもあります。
涙点プラグ 涙の排出を防ぐ処置で重症例に用いる。

ドライマウスの治療

方法 内容
口腔保湿剤 口腔内保湿ジェル、スプレーなど。
唾液分泌促進薬(ピロカルピン、セビメリン) 自発的に唾液が出る人に有効なことがある内服薬です。副作用として過剰な発汗が多く、注意が必要です。
定期的な口腔清掃 虫歯・歯周病予防、肺炎予防のため非常に重要です。
水分補給・ガムなど 唾液の刺激に役立つ。キシリトール入りガム推奨。

全身症状や臓器障害に対する治療

臓器病変あり(腎炎、間質性肺炎、神経障害など)

薬剤 内容
副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンなど) 臓器病変時に小~高用量で使用することがあります。急性の唾液腺炎に使用することもあります。
免疫抑制薬(メトトレキサート、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチルなど) ステロイドの副作用軽減・臓器障害コントロールのために併用されます。

合併症への対応

合併症 対応
リンパ腫のリスク シェーグレン症候群の約5%にリンパ腫やマクログロブリン血症など、血液疾患を合併することが知られています。唾液腺の腫れや発熱、体重減少、貧血などに注意しながら長期間経過観察が必要です。
感染症のリスク 乾燥により呼吸器・口腔、眼の感染が起こりやすいため、必要に応じて、感染対策、ワクチンなどの予防が大切です。
う蝕・口腔トラブル 歯科と連携し、定期的な管理が非常に重要になります。
うつ・不安・慢性疲労 乾燥症状は非常に強いストレスになります。ストレス下の生活は交感神経を刺激し、さらなる乾燥症状を招きます。ストレスを回避するよう意識することが非常に大切です。必要に応じて心療内科や精神科との連携を考えます。

生活指導・セルフケア

  • 十分な水分摂取、乾燥対策(加湿器使用など)
  • 口腔内保湿剤、点眼薬の使用を習慣化する
  • 唾液腺マッサージ
  • 夜間の口テープの使用
  • 低刺激歯磨き粉の使用
  • 目の酷使を避ける(長時間の画面使用など)
  • 禁煙(口腔・目の乾燥を悪化させる)
  • 歯科受診の継続、フッ素入り歯磨きの使用
  • ストレスや過労を避け、規則正しい生活

シェーグレン症候群の
よくある質問

シェーグレン症候群は治りますか?

現時点では、シェーグレン症候群を完治させる治療法はありません。ただし、症状を緩和し、生活の質を改善する治療法はあります。目や口の乾燥を和らげる治療や、全身に影響する場合には免疫抑制剤やステロイドを用いた治療を行います。乾燥から身を守るための生活習慣の改善も欠かせません。早期の診断と治療、すぐに相談できる専門医の存在が、症状の進行を遅らせることに役立ちます。

シェーグレン症候群があると、長生きできないのですか?

シェーグレン症候群自体が直接寿命に影響を与えるわけではありません。過度な心配はストレスとなり、症状の悪化につながります。ただし、重篤な合併症や悪性リンパ腫のリスクが増加するため、定期的な医師の診察や検査が必要です。症状が適切に管理されていれば、長期的な予後は良好です。

シェーグレン症候群が進行するとどうなりますか?

この病気は個人差が大きく、軽い乾燥症状のみの人もいれば、全身の臓器に影響が出る場合もあります。進行する場合、肺や腎臓の問題、神経障害、さらには悪性リンパ腫のリスクが増加することがあります。

ドライアイやドライマウス以外にどんな症状がありますか?

ドライアイやドライマウス以外にも、皮膚や鼻、気道の乾燥、便秘や下痢、関節痛や筋肉痛、疲労感、発熱、リンパ腺の腫れなど様々な全身症状がでることもあります。また、腎臓、肺などの臓器にも影響を及ぼすことがあります。

シェーグレン症候群はストレスで悪化しますか?

ストレスは自律神経のひとつ、交感神経を刺激します。交感神経刺激は唾液の分泌を減らし、乾燥症状の増悪、口腔内の感染リスクの増大につながります。日ごろからストレス管理が重要です。リラクゼーション法や趣味を楽しむ時間を持ち、精神的な負担を軽減するようにしましょう。

生活で気を付けることはありますか?

乾燥症状を軽減するために、定期的に人工涙液を使用したり、口を潤すための水分摂取、保湿ジェルの使用を心掛けたりすることが重要です。また、加湿器を使うことで生活環境の湿度を保つこと、歯磨きや定期歯科受診の徹底、炎症がないときは唾液腺マッサージなども効果的です。ストレスや疲労が症状を悪化させることがあるため、規則正しい生活や適度な運動をするようにしましょう。

運動をしても大丈夫ですか?

まったく問題ありません。ただし、疲労感が強い時や微熱があるとき、唾液腺が張れている際は無理せず休息を取ることも大切です。間質性肺炎など、肺病変の合併がある人は、過度な運動性身体が酸欠になることもあります。医師と相談しながら、無理のない範囲で運動を取り入れると良いでしょう。

旅行や長距離移動をするときに注意することはありますか?

旅行など、まったく問題ありません。ただ、長距離移動や飛行機の移動、ホテル滞在など、乾燥が予想されますので、乾燥対策グッズをお忘れにならないように気を付けてください。薬も忘れないように持参し、必要に応じて医師の診断書を持って行くようにしましょう。

シェーグレン症候群の治療中にワクチン接種はできますか?

ワクチン接種は一般的には問題ありませんが、免疫抑制剤やステロイドを使用している場合、ワクチンの種類によっては注意が必要です。特に生ワクチン(例:麻疹や風疹)は避けるべきことがあるため、接種を検討する際には、主治医に必ず相談してください。

他の膠原病と併発することはありますか?

シェーグレン症候群は他の自己免疫疾患と併発することがよくあります。特に、関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性強皮症などとの併発が多く見られます。このような場合、症状が複雑化するため、定期的な経過観察が重要です。

シェーグレン症候群は遺伝しますか?

シェーグレン症候群は厳密には遺伝病ではありませんが、家族に自己免疫疾患がある場合、発症リスクがわずかに高くなることがあります。同一家族内での発症率は約2%とされていますが、必ずしも親から子に遺伝するわけではありません。

シェーグレン症候群と診断されましたが、何科を受診すればよいですか?

膠原病内科やリウマチ内科の受診が一般的です。また、ドライアイやドライマウスの詳しい精査が必要な場合には、眼科や歯科、口腔外科の受診を提案させていただくこともあります。まずは膠原病内科を窓口にご相談ください。

症状が悪化しやすい季節はありますか?

乾燥の強い秋~冬にかけて、目や口の乾燥症状が悪化しやすくなります。早めの乾燥対策を心がけましょう。また、シェーグレン症候群の一部の方は全身の発汗機能が低下している方もいます。春~夏にかけて、熱っぽさや倦怠感が強くなります。熱中症のリスクもあがるため、暑さを避けることやこまめな水分対策、汗をかくための運動なども大切になります。個人差がとても大きい病気なので、その都度主治医に相談し、アドバイスをもらうことをお勧めします。

妊娠や出産に影響はありますか?

シェーグレン症候群でも妊娠・出産は可能ですが、妊娠中や産後に症状が悪化することがあります。また、抗SS-A抗体が陽性の母親の場合、胎児が新生児ループスや心臓の異常を引き起こす可能性があるため、専門医への相談、慎重な経過観察が必要な場合もあります。当院は昭和医科大学のリウマチ母性外来と連携しています。少しでも不安があれば、当院を窓口にまずはご相談下さい。